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2013年5月18日 (土)

ペンギンロード(地球風第24回)

       (南極大陸) 

 

 

聖なる大陸、南極に到着してから3週間。

 

 空には雲が重くへばりついている。エンジン付きボート、ゾディアックに乗り込み、今日も南極の大地を踏みしめる。

 

 ふと足下に視線を移すと、雪面に不思議な線が刻まれている。その先には沢山のペンギンが歩いていた。

 

 彼らは、自分の巣から海へ出かけるとき、同じ道を常に通り、圧雪しながら「ペンギンロード」を作り上げる。エッホ、エッホッと進んでゆく彼らの背中をぼんやり眺めていた。

 

 一歩、二歩、三歩、次の瞬間、頭から見事にこける。あっぱれな転び方に思わず笑ってしまう。恥ずかしそうに立ち上がり、また歩いてはこける。その繰り返し。

 

 ふっと疑問が浮かんでくる。

 

 ペンギンがフリッパーと呼ばれる「手」を広げて歩くのは何故か。バランスをとっているためではないのか?

 

 近くにいたナチュラリスト、リズに聞いてみる。

 

 「ペンギンはどうして手を広げて歩くのですか?」

 

 彼は微笑みながら、ゆっくりとした口調で答えてくれた。

 

 「手を広げて歩くのは、熱を脇から放出するため。今の気温はマイナス10℃、ペンギンにはまだまだ暑いのさ。もしマイナス40度まで下がったら、ペンギンは手を脇に擦りつけるようにして歩いてゆくよ」

 

 南極には、多くの生命が息づいていた。沢山のペンギン、オキアミなどの甲殻類、そして海を黒く染めるほどのプランクトンたち。

 

 今この瞬間も、ペンギンはどこかの氷山を歩いている。

 

 この遠い世界と僕たちの世界は、同じ「とき」によって繋がっている。

 

 ペンギンが一歩一歩あゆむごとに、時間も止まることなく一瞬一瞬刻まれてゆく。

 

 流れゆく時の中で育まれる、沢山の生命に思いを馳せると、生きとし生けるものは全て、それらを取り巻く自然によって生かされていることを実感する。

 

 この壮大な“生命のゆりかご”というべき南極大陸はこれからどこへ向かっていくのか? 

 

 それを見届けたい・・・

 

 そんな思いに駆られながら、僕はペンギン大陸をあとにした。

 

                         ノムラテツヤ拝

 

01


 

南極は蒼の大陸だった

 

 

 

02


 

子供のジェンツーペンギンがやってきた

 

03


 

そのままうつ伏せで寝てしまうペンギン

 

 

 

04


 

ペンギンの凛々しい姿を撮影したい。その想いが叶った

 

 

 

05


 

南極には無数のペンギンロードが刻まれている

 

 

 

06


 

子供に餌を与えるため、必死に駆けるお母さんペンギン

 

 

 

07


 

プランクトンの多い海は生命の宝庫。ザトウクジラがやって来た

 

 

 

08


 

これだけのペンギンを生かしていける。それが豊饒な海の証

 

 

 

09


 

ペンギンは親離れしてから、一人旅に出る。世界を自分の目で見に行くのだ

 

 

 

10


 

あなたが見ているこの瞬間、ペンギンもどこかで生きている。天から平等に与えられたもの、それは今一瞬のこの時間

 

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ホンカデザインセンターPresents
写真家・野村哲也 スペシャルブログ

ホンカログハウスに居住したことのある筆者が地球の息吹を綴ってゆきます
プロフィール
Author: 野村哲也
1974年12月13日生まれ。
岐阜県岐阜市出身。
高校時代から山岳地帯や野生動物を撮り始め、“地球の息吹き”をテーマに、アラスカ、アンデス、南極などの辺境地に被写体を求める。
2007年より、南米のチリに移り住み、四季を通してパタゴニアの自然を撮影。写真はCMや新聞、雑誌などに数多く掲載されている。今までの渡航先は85ヶ国に及び、海外の辺境ツアーガイド、TV局やマスコミのアテンドにも携わる。国内では幼稚園から生涯学習センターまで、幅広い年齢層に講演活動を続けている。2011年より南アフリカ、ステレンボッシュに移住

著書
「パタゴニアを行く 世界でもっとも美しい大地」
「世界の四大花園を行く 砂漠が生み出す奇跡」
(共に中央公論新社)
写真集「PATAGONIA」
「ペンギンがくれた贈りもの」
(共に風媒社)
~たくさんのふしぎシリーズ~
「砂漠の花園」
「100年にいちど咲く花」
「僕のデナリ国立公園ガイド」
(共に福音館書店)など多数